おいしい水の条件は知っていますか?【天然水研究所】
水は無色透明で、味をつけているわけではありません。しかし、おいしいと感じる水と、あまりおいしく感じない水がありますよね。
私たちが毎日飲む水。おいしいと感じる水には、何か理由があるはずです。
おいしい水の条件について、解説していきます。
おいしい水の水質要件がある
昭和40年代、高度経済成長によって、水源の汚染がひどくなっていました。工場から排水される水、家庭から排出される生活排水などによって、日本の水源は汚れていったのです。
その結果、異臭味(カビ臭)やカルキ臭によって、水道水はまずくなったと言われ始めました。
そこで、昭和59年に、厚生労働省(現在の厚生労働省)は、おいしい水の水質要件をまとめるため、「おいしい水研究会」を設立しました。
おいしい水研究会は、水質や料理などの専門家、有識者によって構成されました。座長には、当時の国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院)の鈴木武夫氏を迎えました。声優の大山のぶ代さんなど、著名人も参加していました。
おいしい水研究会によって、水道水のおいしさの現状と調査が行われました。そして、おいしい水の要件がまとめられました。
- ミネラル(カルシウムやマグネシウム)がほどよく含まれていること
ミネラル分が適量含まれていると、コクのあるまろやかな味になります。多いと苦味、渋みがでます。
- 嫌な臭い、嫌な味がしないこと
水道水の消毒に使う塩素は、塩素臭、カルキ臭を与えます。嫌な臭いがすると味も落ちます。また、不純物が混じっていると嫌な味があします。
- 水温が10度から15度であること。
冷たい水がおいしいと感じますが、冷た過ぎると、口の中の感覚がマヒするため、味を感じなくなります。味覚は人によって異なりますが、10度から15度が心地よい水温となります。
- 水温
人は生理的に冷たい水をおいしいと感じます。また、水を冷やすとカルキ臭などの臭いが気にならなくなります。
- 蒸発残留物
水が蒸発した後に残る物質です。主にカルシウム、マグネシウム、シリカ、ナトリウム、カリウムといったミネラルです。適度に含まれているとコクがでて、まろやかな味となります。
多く含まれ過ぎると渋みや苦味が増し、味が悪くなります。
- 硬度
主なミネラル成分であるカルシウムおよびマグネシウムの含有量です。硬度によって、軟水、硬水が決まります。硬度が低いと軟水、硬度が高いと硬水と言います。硬度成分が適度に含まれていることがおいしい水の条件です。軟水は味にクセがなく、さらっとしていて、まろやかです。硬水は重たく、しつこい味がします。
日本の水は軟水が多くなっています。そのため、日本人は慣れ親しんだ軟水のほうがおいしいと感じる傾向があります。
- 遊離炭酸
水に溶けている炭酸ガスのことです。水中に含まれる炭酸は、舌や胃を刺激し、消化液の分泌を助けます。遊離炭酸は、水にさわやかさを与えます。多過ぎると刺激が強くなって、まろやかさが失われます。逆に少な過ぎると、気が抜けた味となります。
- 過マンガン酸カリウム消費量
水中の有機物や還元性物質の量を、一定の条件下で酸化させるのに必要な過マンガン酸カリウムの量を過マンガン酸カリウム消費量と言います。
多く含まれていると、味に渋みが感じられます。
一般的に、過マンガン酸カリウム消費量の多い水は、有機物の含有量が大きいことを示しています。有機物の量が増えると、消毒をするために塩素の消費量も増えます。結果、味を損ないます。過マンガン酸カリウム消費量は、土壌を由来とする腐食物質、し尿、下水、工場排水などが混入した場合に増加します。
- 臭気強度
人の感覚を6段階に分けて、臭気を数値化したものです。
何の臭いがついているかは関係がありません。
おいしい水は、3以下の楽に「感知できる臭い」以下と定められています。
・0-無臭
・1-やっと感知できる臭い
・2-何の臭いであるかわかる弱い臭い
・3-楽に感知できる臭い
・4-強い臭い
・5-強烈な臭い
カビ臭や藻臭など、水に不快な臭いがついているとまずく感じます。
カビの臭いの元となっているのは、河川や貯水池で繁殖する植物プランクトンによるものです。
植物プランクトンは、臭いの元となる物質を作ります。
カビ臭さは、通常の浄水処理では完全に除去することができません。
- 残留塩素
水道水に残留している、消毒用の塩素のことです。残留塩素の濃度が高過ぎると、カルキ臭の原因となります。カルキ臭は、塩素単独の臭いのほか、塩素と水中のアンモニアなどが反応して生じるクロラミン臭があります。クロラミン臭は、微量でも不快に感じる臭いです。
残留塩素は、遊離残留塩素と結合残留塩素を合わせたものです。
遊離残留塩素とは、水を塩素消毒する際に発生する、次亜塩素酸と事案塩素酸イオンのことです。
残留塩素については、水道法第22条に基づく水道法施工規則(厚生労働省令)第17条3号により次のように規定されています。
「給水栓(俗に言う蛇口)における水が、遊離残留塩素を0.1mg/L(結合残留塩素の場合は0.4mg/L)以上保持するように塩素消毒をすること。ただし、供給する水が病原生物に著しく汚染される恐れがある場合、または病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物もしくは物質を多量に含む恐れのある場合の給水栓における水の遊離残留塩素は0.2mg/L(結合残留塩素の場合は、1.5mg/L)以上とする」
つまり、蛇口からでる時点で、残留塩素が残留することが定められています。水道水は塩素が残ることによって、一般細菌やウイルスなどを防いでいます。
塩素が残留していることは、適切に消毒が行われていることを示しています。
【おいしい水の水質要件】
項目 | 数値 |
水温 | 最高20℃以下 |
蒸発残留物 | 30〜200mg/L |
硬度 | 10〜100mg/L |
遊離炭酸 | 3〜30mg/L |
過マンガン酸カリウム消費量 | 3mg/L以下 |
臭気強度 | 3以下 |
残留塩素 | 0.4mg/L以下 |
おいしい水をさらにおいしく使い分けよう
以上のように、日本にはおいしい水の水質基準があります。水質基準の範囲内ので数値であれば、実際においしく感じられるようです。
また、おいしい水を日常の中でうまく使い分ければ、さらにおいしく水を味わうことができます。例えば、お茶やコーヒーの香りを楽しむには軟水がよいとか、チャーハンやピラフのようなパサパサした米料理を楽しむには硬水がよいとか、水の硬度によって使い分けることでさらにおいしさが変わります。
水のおいしさは奥深いですね。